脳出血した中高年のための怪談100物語 更新中です。 怪談はあなたと私をつなぐ、1話2000字のコミュニケーションツール 広告

消失 100-3

100-3 「消失」

 

「鈴木さん、大丈夫ですか」

看護師の声で、誠は浅い眠りからさめた。

「お客さん、いらしてますよ。警察の方、第二面会室です」

「あ、はい。すみません」

誠はベットから身を起こした。

入院してからもう何日になるだろう。

こうして寝てばかりいるうちに日付の感覚もおかしくなってしまっている。

点滴をつけたまま、第二面会室へむかった。

警官の面会はしょっちゅうある。

誠自身、それは仕方がないと思っている、なぜなら誠は集団昏倒事件の首謀者と疑われているのだから。

警察の話によると、二週間ほど前のこと、TV番組の収録として、古寺を借りて、怪談100物語を開催した誠は、そこで、集まった会の参加者、番組制作スタッフ、合計100数十名と共に、意識を失って昏倒し、翌日、になって様子を見に来た古寺の管理人に発見され、通報されたのだ。

倒れていた者のほとんどは、軽症で、後遺症もなく、すぐに帰って行ったが、中には誠のように、数日間、意識を喪失し、脳波の乱れなどがみられて、入院している者もいる。

警察の調査だと、集団で危険ドラックなどの薬物を使用していた、もしくは集団催眠などを行っていた可能性があり、首謀者と思われる、霊能力者の鈴木誠は、入院したまま、連日、病院で尋問されている状態だ。

「すべてが番組として収録されていたはずです。

それを見れば、わかるんじゃないんですか?

僕は、参加者のみなさんと怪談の会をしていただけですよ」

何度も話した話を、今日も誠は繰り返すしかなかった。

古寺で100物語をするのを収録するので、司会、進行をしてくれ、と依頼されて、番組制作会社のスタッフと打ち合わせをして、それを実行しただけだ。

古寺に集まって、深夜にみんなで怪談をしていたのはおぼえている。

そして、いつしか意識を失っていて、起きたら病院にいた。

「刑事さん。申し訳ありませんが、本当に、なんにもおぼえてないんですよ。

どこかで頭を打ったのか、どうかわかりませんが、あの晩、自分がどんな話をして、どんな話を聞いたのかさえ、わかりません。

まるで記憶が消えてるんです」

何回聞かれても、こう答えるしかない。

「ふぅ・・・」

ここ数日、毎日、誠から同じ返事を聞かされている刑事が、ため息をついた。

「だからですね、鈴木さんさけだけじゃなくて、あの晩、あそこにいた人たちがみなさん、こういう状態なんですけど、あそこでは、一体、なにがあったんでしょうね?」

「録画されている画像を調べればわかると思います」

この返事も何度もした。

しかし、刑事たちは、いつも首を横に振るだけだ。

「ないんですよ。それが」

めずらしく、これまでにない説明が聞けた。

「ない、とは?」

「鈴木さん以外も、みなさん、なにも覚えていないし、画像も音声もすべての記録が消えてるんですよ」

「すべてが、消えてる、って?」

みんな、僕とおなじようになにも覚えてないのか?

まさか、そんなことが、いったい、どうして。

「精密検査の結果、危険ドラック、覚醒剤などの使用はみられませんでした。あとは、集団催眠ですかね。

まったく、こんな事件、我々も経験がありませんよ。

言っちゃ悪いが、まるで怪談です」

 

怪談。

 

怪談といえば、もともとこれは百物語だったはず。

 

参加した者が誰もおぼえていない百物語。

 

誰もおぼえていない。

 

「いや、誰もおぼえていないんじゃなくて、恐ろしすぎて、記憶、記録できなかったんだとしたら?」

 

そんな話なら聞いたことがある。

 

「青行燈(あおあんどん)」

 

誠はつぶやいた。

 

「なんですか、それは」

「怪異の名前です。百物語の百話目が語られた後にすがたをあらわすとされています。

または、単一の妖怪、幽霊などではなく、百物語の最後に起きる現象だとも言われています。

恐ろしすぎて、記憶、記録できない現象、青行燈(あおあんどん)、僕たちは、それを呼び出してしまったのかもしれません」

「おいおいおい。そんなものがでてきてら、私たちは、お手上げですよ」

刑事があきれたように両手の平を上にむけた。

その日の面会は、それで終了した。

刑事たちは最後に、「今日で最後になるかもしれません。お大事に」と頭を下げて帰っていった。

病室へ戻った誠は、携帯で、今回の番組の制作会社へ電話してみた。

そういえば、事件後、まだスタッフたちと会っていない。

「現在、この電話番号は、使われておりません」

会社に電話はつながらなかった。

誠はスタッフ個人の番号へ電話した。

「鈴木さん。大丈夫ですか? 入院してるって、聞いたんだけど。大変だったね。うん、そうなんだよ。今回の事件がまぁ、きっかけみたいな形になって、あの会社、倒産したよ。うん。今回のギャラとかそういうのは、俺はよくわかんないんだ。ごめん。とにかく、体、気をつけてね。え?当日の現場? 俺はいなかったから知らないけど、行った連中は、みんななんにもおぼえてないって、言ってたよ。集団ヒステリーっていうの、そういうのになって、みんな倒れちゃったみたいだね。怪談、怖いなー」

記憶も、記録もなく、会社も消えた。

電話を切って誠は茫然とした。

 

江戸時代の妖怪画集、「今昔百鬼拾遺」にも描かれている青行燈(あおあんどん)。

そんなもの、本当にいるのか。

END

☆☆☆☆☆

3話めは以上です。

この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。

これまでのブログ同様、ご意見、ご感想、お待ちしてます。

 

近所にマクドナルドがオープンしてドナルドがきたので、一緒に記念撮影してきました。

ドナルドは実在します(笑) 

 

今日も楽しいですね。

 

 

 

 

 

 

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