脳出血した中高年のための怪談100物語 → 鈴木誠の怪談100物語の タイトルで小説投稿サイト、アルファポリスと同時更新中です。 サイドバーに「アルファポリスリンク」へのリンクがあります。 広告

100-19 霊能者-1

100-19 霊能者-1

まだ学生だった頃、誠は地元のコンビニエンスストアで夜勤をアルバイトをしていた。

夜の10時から翌朝の7時までの勤務だ。

その店はコンビニの本部が直接経営している直営店で、直営店のルールとして、夜勤は2人以上で勤務しなくてはならなかった。

しかも、2人のうち、1人は社員でなければならなかった。

結果、誠は毎晩、コンビニの社員と一緒に勤務することになった。

その夜、誠が組むことになったのは、初めて会った青年だった。

いつもの中年の社員さんが急に入院することになったので、代わりにしばらくここの夜間シフトに入ってくれるのだという。

 

「よろしくお願いします

 

「Tです。よろしく」

 

二枚目で背が高く、ちょっとスカした感じのお兄ちゃんだ。

なんか、この人、感じ悪いな。

誠のTへの初対面の印象はけっしてよくなかった。

いつもどこか人をバカにしたような表情で、にやけている感じがした。

 

「鈴木くんは、学生なのか」

 

「はい。I大です」

 

「おっ、I大。俺の後輩じゃやん」

 

「え。本当ですか」

 

「うん。そうだよ。俺、演劇部だったけど

 

「僕は、ミステリ同好会です」

 

「ミステリって、あれ。幽霊とか」

 

「いいえ。推理小説の方のミステリです

 

「あ、そう」

 

Tはつまらなさおうに、肩をすくめた。

 

1晩中、2人ですごしていると、客がこない時など手持ちぶさたになって、誠はつい、いつもの感じで、

 

「Tさん。怖い話、奇妙な話って、知りませんか。僕、そういう話を人から聞くのが好きなんですよ」

 

「ふっはははは」

 

誠に聞かれたTは、いきなり、吹きだした。

急に笑うなんて、失礼な人だな。

誠はTの態度に少し気を悪くした。

 

「幽霊とか、そういうの?」

 

Tに聞き返されたのだが、そっけなく、

 

「そうですよ。すいません。興味ないですね」

 

「興味かぁ、興味はないよ」

 

「ですよね」

 

「ああ。興味はないけど、けど、いるよ」

 

Tがきっぱりと言い切った。

 

「いるよ。幽霊。俺、みえるから」

 

「は」

 

誠はあ然としてしまった。

 

「Tさん、霊能力者なんですか?」

 

Tは、大げさに顔をしかめた。

 

「霊能力者ってTVとかにでてるやつだろう。ああいうのは、インチキが多いから、俺はみない」

 

「インチキ、ですか」

 

「ああ。

例えば、さっきから、何度も自動ドアが勝手に開いてるよね。

ああして、誰もいないのに、開いたり閉じたりしてる時は、見えないものが出入りしている場合が多い。

わかる?」

 

「Tさんは、わかるんですか」

 

「わかる。だから、わざと無視してる。

興味がないのに、あんまりかまっちゃいけないんだ。

生きてる人間だってそうだろ。

道を歩いてる人をいちいちまじまじと見たりしない」

 

誠はTの言葉をどこまで信じていいのか、わからなかった。

 

「鈴木くんは、霊を信じるの?」

 

「信じますよ。うまくいえないですけど、信じる人には霊はいると思います」

 

「信じてなくてもいるけどね。

俺は、子供の頃から普通にみえたから、全然、みえて普通、いて普通。

反対にいうと、見ない、いない、って言い張る人はすごく失礼だと思う。

普通の人間だとして考えればわかりやすいけど、そいつは、いない、存在しないと、決めつけてるやつとなんて、誰もなかよくしないよね。意地悪されても当然だよ」

 

「そういうものですか」

 

「そういうもん」

 

Tは自身たっぷりに首を振る。

 

「鈴木くんは、I大だったら、演劇部に子供がいるの知ってる?」

 

演劇部の子供の幽霊、たしかに聞きおぼえがあった。

学が通うI大には、演劇部専用の練習場と舞台があった。

その練習場と舞台には、幽霊がでる、大学の生徒の間でささやかれている噂だ。

子供の幽霊がでるとも、女の幽霊だとも言われている。

 

「あそこには、何人もいるんだ。

子供も女も両方いるし、子供は何人もいる。

子供と女とは血はつながってない。

あそこ、戦争があった場所だから、たくさん死んでるんだよ」

 

「見たんですか」

 

「うん。でも、話していない。

あそこの連中は、話すタイプじゃなかった。

別にあそこで芝居するのをイヤがってもいない。

イヤだったらイヤがらせするからな。

ただ、人がおおぜい集まってるから、顔をだすだけだよ」

 

「いい霊なんですか」

 

「いいか、悪いかは知らんけど、人の迷惑にはならないよ」

 

誠が大学で聞いた話だと、ステージで芝居の稽古をしていると、誰もいないはずの舞台裏に子供がいて、袖から舞台をのぞいている。

それが子供でなく、大人の女の場合もある。

なにもせずにただ舞台を眺めているだけだ。

時には、それらが舞台裏を走り回っていることもある。

子供が全速力で体当たりしてきて、ぶっかった瞬間に消えたりするらしい。

あまりに普通の少年に見えるので、近所の子供が入ってきているのかと思うそうだ。

 

「Tさんは、怖くないんですか?」

 

「なにが、あれは普通の人間と同じだよ。すごく悪い奴もいるけど、それもそんなにたくさんはいない。生きてる人間も一緒だろ。

一緒なんだよ。霊になっても。

大多数は無害さ」

 

その夜、結局、朝まで、誠はこの奇妙な先輩から、霊の話を教えてもらうことになった。

 

END

☆☆☆☆☆

19話めは以上です。
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。
これまでのブログ同様、ご意見、ご感想、お待ちしてます。

僕の大学時代の実話です。

Tさんのモデルの人は、いま、なにをしてるんでしょうね。
人生の中で霊能力がある、という人とたまに出会います。

しかし、それを信じるかどうかは、結局、自分しだいですよね。
今日はあたたかいですね。

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