脳出血した中高年のための怪談100物語 更新中です。 怪談はあなたと私をつなぐ、1話2000字のコミュニケーションツール 広告

100-20 霊能者-2

100-20 霊能者-2

霊が見えると、なにかいいことがあるのか?

 

Tと話しているうちに、そんな話題になった。

Tの能力が本物であれ、そうでないであれ、そのテの話題が好きな人間であるのは、間違いないと思った。

 

「例えば、俺には見えていて、一緒にいる相手にまったく見えていないとする。

よくあるパターンだ。

それでおかしいのは、見えてる俺の方が普通じゃなくて、見えないやつの方が偉そうにしてる、という。

だってそうだろ、目の見えないやつの方が目の見えるやつよりも、偉そうに世界を語るのは、おかしい。

俺は、昔からずっとそう思ってた。

だから、あまりにもわかってないやつには、お仕置きをすることにしている」

 

「お仕置き?」

 

「ああ、あなたは本当は目が見えていませんよ。世界は、あなたの見えている部分ばかりじゃないですよって、教えてやるのさ」

 

Tはウィンクしてみせた。

大学の演劇部にいたせいか、Tの仕草はいちいち芝居がかっている。

Tは、ある女の子をこらしめた話を語りはじめた。

 

「その子は、学校の成績が良くて、しかも美人だった。

いつも、私はわかってるのよ、って感じだ。

俺と付き合ったのも、たまには珍獣の相手をしてあげるわ、ぐらいの感覚だったんだ。

俺は面食いだから、中身はどうあれイイ女と仲良くできるのは歓迎だ。

だから、彼女と付き合った。

それに、俺だってそこそこイケメンだろ。

彼女と並んでも、ルックスだけならそれほど負けちゃいないさ。

美男美女のゴールデンカップルだ」

 

さらりと本人に言われて、誠は反応に困ってしまった。

Tは、感じの悪い二枚目を絵に描いたような人物だった。

 

「さて、そのあまりにもわかってないかわい子ちゃんとしばらく付き合っていたんだが、そろそろ俺の我慢は限界になっていた。

どうやらこいつには、あなたの知らない世界ってやつを教えてやらなけりゃいけない」

 

「あなたの知らない世界ですか」

 

そんな名前の心霊番組があった気がする。

 

「ああ、そうだ。

これからの彼女のためにも必要な経験だ。

俺はある日、彼女をディナーに誘った。

ちょっとしゃれたレストランを見つけたんだ。

シェフのオススメコースで予約を取ったんで、行こうよってな」

 

話しながら、Tは懐から手帳をだし、写真を一枚、取り出した。

スーツ姿のショートカットの美人さんが映っている。

きりっとした瞳がまっすぐにこちらを見つめている。

なるほど、見るからに、自分に自信がありそうだ。

 

「たしかにおしゃれな店だった。レンガ造りの洋館風の建物で、腕の立つシェフがやっていた。

でも、この店はそれだけじゃない。

見える人間の間では有名な店だった。

住みついてるんだ。

そいつは、客がいてもかまわずやってきて、酒があると、1人でちびちびワインを飲むんだ」

 

「店の人は、それ、知ってるんですか」

 

「知ってるよ。

でも、気にしてない。

別に誰の迷惑でもないから。

彼女は、約束の時間にやってきた。

ちょうどその日は、店には客は俺たちしかいなかった。

俺はシェに頼んで、やつへの一杯を俺たちの隣りのテーブルに置いてもらった。

誰もいないテーブルにグラスワインが一つ。

 

「あれ、なに?」

 

「いや、なんでもないと思うよ。

インテリアかな」

 

「それ、たぶん、違うわ」

 

彼女はさっそく異常気づいたが、それ以上は深く追求しなかった。

俺たちは食事をした。

料理はたしかにうまかった。

俺は隣のテーブルのグラスをのぞき見して、そろそろかな、と思った。

 

「あれ、ワイン、減ってるよ」

 

「え。やだ。蒸発したの?」

 

「蒸発じゃないと思うよ」

 

「気のせいじゃないの」

 

「いや、絶対、減ってるって」

 

彼女は、目の前のグラスを何度も見直した。

 

「どうして、減るの」

 

不思議そうにつぶやく。

彼女にしてはめずらしく素直な反応だ。

 

俺は適当にしゃべって、彼女の気をグラスからそらした。

 メニューは進み、メインも終わって、デザートになった。

 

「あれ、また、減ってる」

 

彼女が声をあげた。

グラスのワインはもう半分以下になっていた。

そりゃそうだ。

俺たちの前で、あいつは普通にワインを飲んでいたからな。減って当然だ。

 

「すいません。そこのグラス、おかしんですけど」

 

彼女は手をあげて、ウェーターを呼んだ。

そして、隣のテーブルでいかに異常な事態が起きているのか説明しだした。

それを聞いていた俺は、思わず吹きだした。

 

「なんで、笑うの」

 

「だって、きみには、あの男が見えないみたいだからさ」

 

「あの男?」

 

「隣りのテーブルにいる、60才ぐらいの無精ヒゲのおじさんだ。さっきから、ずっと1人で舐めるようにちびちびやってる。彼はいつもそうさ」

 

「彼? そんな人、いないでしょ」

 

「きみには見えない。でも、いる」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

彼女は大声をあげて立ち上がった。基本的に、自分の意見に反対されるのが嫌いな子だった。

 

「どこにそんな人がいるって言うのよ」

 

彼女は席を立ち、隣のテーブルを指さして、怒鳴った。

その時、隣のテーブルのグラスが宙に浮いて、彼女の顔にワインが浴びせられた。彼女には、そう見えたはずだ。

俺には、やつがうるさい彼女に、グラスのワインをぶっかけたのが、はっきり見えた。

ギャーとキャーの中間くらいの悲鳴をあげて、彼女は店をでていってしまった。

俺は腹を抱えて笑い転げた。

彼女とは、これで終わりになった。

後悔はしてない」

 

「ひどいですね」

 

楽しそうに話すTが憎らしくみえてきて、誠もついにらんでしまった。

 

「見えない人間が傲慢すぎるんだよ。

たまには、こんな目にあったほうがいい」

 

Tはその時の光景を思い出したのか、満足げに微笑んだ。

 

END

☆☆☆☆☆

20話めは以上です。
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。
これまでのブログ同様、ご意見、ご感想、お待ちしてます。

 

この100物語も20になりました。

読んでくださっている方、ありがとうございます。

ようやく5分の1です。

最後までよろしくお願いします。

今日はあたたかいですね。

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