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100-33 虫

100-33 虫

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誠のところへ相談にくる客は、もう、その相談にくる時点で、おかしくなっているものも多い。

そもそも、霊能者のところにわざわざお金を払って相談したい、というくらいだから、常軌を逸した悩みを持っているのは、あたりまえで、そのうえで、その悩みの性質によっては、相談者の精神がかなり参ってしまっているケースもある。

 

今回の依頼人は、コンタクトを取ってきた時点で病院に入院していた、大型の総合病院にいるという。

そこで現在の医学では解決できない悩みにぶつかったので、霊能者の誠に、病院まできて欲しいと頼んできた。

「こうして電話で話すだけでは、わかってもらえない、と思うんです。

お手数ですが、G病院の私の病室まで、きていただけませんか?」

「それは別にかまいませんが、あの、あなたはいま、病院で医師の治療を受けているんですよね?そこへ、僕のようなものが来るのは、僕はいいですけど、あなたを担当している医師、またG病院自体にとって、迷惑で、望まざる客なんじゃないでしょうか?」

「私には、先生の力が必要なんです!!

ご迷惑はおかけしません。

お願いします!!

人助けだと思ってきてください。家族も認めてくれています」

 

そこまで言うならと誠はG病院へむかった。

 

依頼人は、個室の病室に入院していた。

彼は、高齢の男性だった。

本人によると60代後半で、いまは退職しているそうだ。

自宅で悠々自適に暮らしていたが、体調を崩し、近所の医者へ行ったところ、G病院を紹介され、検査の後、入院した。

「胃腸がやられてるらしんです。

潰瘍がたくさんあるんです。

けっこう痛むんですよ」

「お気の毒ですね。

しかし、それは通常の治療で治していくのが一番じゃないんですか?」

「いやいや、鈴木先生。

私には、わかってるんですよ。

なんで私がこうなっているのか。

これは、呪いなんです」

 

依頼人は自信たっぷりに言い切った。

 

「間違いありません。

なんといっても、私自身、身に覚えがありますから」

「あなたはご自身が体調を崩されたのは、呪詛のせいだと?」

「はい。絶対です」

パジャマでベットに横になっている依頼人は、ごく普通の痩せた初老の男性だった。

血色もそう悪くないし、こうして話している分には、健康体に見えなくもない。

「お恥ずかし話ですが、私は以前から悪食でした。

育ちが悪い、というやつだと思います。

田舎は山の中で、私が子供の頃は、本当になんにもなかった。

私は、山や川が自分の家のようなものでした。

大げさでなく、自然の中で学校では教えてくれない、いろんなことを学びましたよ。

いろんな木の実を食べたり、川魚を捕まえて、焼いて食べたりもしました。

カエルだって食べました。

蛇もです」

「まるで、サバイバルみたいですね」

「そうです。いま風にいえばそんな感じですよ。

それでね。

だんだん歳をとると、私も山にはあまり入らなくなっていったんですが、それでも私は、やめられなかった。

いまでも、完全にはやめていない」

 

依頼人が声をひそめた。

 

「なにをです?」

 

「先生、私は虫喰いなのですよ」

 

その言葉で誠がイメージしたのは、珍味として蜂の幼虫などを出す料理店だった。

ああいうものは、それなりに値段のする高級食材だった気がする。

「虫。昆虫を食べるんですか?」

「はい。子供の頃から、アリんこでも、ハチでも食べてましたよ。

虫はなんでも食べれるって思ってますからね。

そうそう、ゴキブリも食べたことがありますよ。

食用の高級なやつじゃなくて、そこらにウジャウジャいる普通のやつ」

依頼人は、まずそうに顔をしかめた。

「あれはいけません。

あれだけは、さすがの私も、噛んだ瞬間に、これは人間の食べ物じゃないって感じましたね。しかも生命力が強くて、口の中で動くんです。思わず吐き出しましたよ」

ぺっぺっとツバを吐くマネをした。

「でもね、他の虫はいまでもイケますよ。

もうそれが習慣になってて、私は目の前にある虫を捕まえると、自分の口に放り込んじまうんです」

 

「それで、虫に呪われていると?」

 

安直な話だが、ありえなくもないと思う。

 

しかし。

 

「なぜ、言い切れるんですか?夢の中に虫がでてきて、あなたに恨み言でも言いましたか?」

「先生、そんなかわいいもんじゃないんですよ。

先生には、直接、そいつを見ていただきたくて、今日、ここへお呼びしたんです。

先生、お恥ずかしいところをお見せしますが、私と一緒にトイレへきてもらえますか?」

誠は依頼人の要望に従って、一緒に個室のトイレへ入った。

相手は誠よりも2,30は年上なので、暴力を振るわれることはないだろうし、まさか、誠をレイプしようとするような同性愛者とも思えない。

 

依頼人は、個室でズボンとパンツをおろし、便器に座った。

 

「先生。失礼します。

問題は、私の大便なんです。

ここの病院の医師にもすでに相談しました。

しかし、医師は、気のせいだろうって言うんです。

でも、私にはそう思えない。

だから、先生に見ていただきたいんです」

 

しばらくすると依頼人は、便座から立って、便器の中を覗き込んだ。

 

「先生、これです。見てください」

 

誠はすすめられるまま、便器に顔を近づけ、依頼人がいましがたしたばかりの大便を眺めた。

 

それは黒っぽい、固そうなものだった。

 

「先生、よく見てください。それは、私の尻からいまでてきたんですけど、なにかに似てると思いませんか?似てるなんてものじゃなく、そのものですよね。わかりますか?」

 

「ハエ、ですか?」

 

「はい、ハエです。私には、ハエにしか見えません」

誠にも、それはハエに見えた。

小さな黒いハエが、便器でじっとしている。

「そいつがいくつも私の尻からでてくるんですよ。

たしかにいままでの人生でハエもたくさん食べました。

でも、それがそのまんまでてくるなんて、ここに入院してからです。

それに私は最近ハエを食べてません。

病院暮らしですからね。

そいつは、幽霊なんですよ。

私のいままでの人生への恨みをこめて、地獄から私の腸へやってきて、尻からでてくるんです。

私の胃腸はそいつらに食い荒らされているんですよ。

いままでの仕返しです」

誠は、依頼人が指さしたそのハエをじっと見つめた。

 

それは生きているようにも見えたが、まったく動かなかった。

毎日、これがでるのなら、ただごとではない。

 

「すいません」

 

誠は依頼人に断って、トイレットペーパーを棒状にて、そして、それを叩いた。

 

グチャ。

 

ハエは、あっさり潰れ、糞になった。

 

 

 

END

☆☆☆☆☆
33話めは以上です。
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。

 

汚い話ですみませんでした。

これも実話ですが、今回は詳細はなしです。

動物や昆虫にも感情のようなものはある気がします。

同じ地球に生きるものとして仲良くやっていきたいですね。

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