脳出血した中高年のための怪談100物語 更新中です。 怪談はあなたと私をつなぐ、1話2000字のコミュニケーションツール 広告

100-35 秘密-2

100-35 秘密-2

 

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 姉とは、あまり仲が良くなかった。

亡くなった人のことを悪く言うつもりはないけれども、自分と姉の生き方はあわなかった。

平凡に生きて、運が良ければ、公務員になれればなぁ(結局なれなかった)ぐらいで生きてきたぼくに対して、姉は、破天荒だった。

ぼくらが育った家庭は壊れていて、僕が物心ついた頃には母はすでに家をでていた。

そして、姉と父はいつもたたかっていた。

姉は、父のすべてが気に入らないようで、父への反抗から不良になった感じだった。

学生の頃から派手だった。

補導もされたし、家出も、駆け落ちもした。

自殺未遂や拒食症にもなった。

ぼくにとって姉は自分とはまったく違う種類の生き方をする人間だったので、ある意味、他人よりも遠いところにいた。

デザイン系の才能があったとかで、高校を出た後、専門へ行って、その後、いろんな職を転々とした。

モデルだったり、そうした芸能っぽいこともしてたみたいだ。

顔はそこそこかわいかったと思う。

まるっきりの赤の他人なら、一緒にいて楽しい人だったかもしれない。

姉の死は、警察から知らされた。

姉は、殺人事件の被害者になったのだ。

反社会勢力の構成員と同棲していた姉は、その相手の抗争のしがらみに巻き込まれて、殺害されてしまったらしい。

父は嫌がったが、姉の遺骨は、我が家の墓におさめることになった。

ぼくが、姉の墓参りに行くようになったのは、姉が僕の夢にでてきたからだ。

実際、ここ何年も会っていなかったが、姉は、若い時とあまりかわらず、可愛らしかった。

水色のワンピースを着て清楚な感じだった。

よくしゃべる人だったが、黙ってぼくを眺めている。

毎晩、姉の夢を見た。

これはなにか意味があるのかもしれない、と思って、ぼくは姉の墓へ行った。

最初に会ったのは、姉と同じくらいのトシの中年の男だった。

有名な運送屋のジャンパーを着ていた。

彼は、ぼくを一目見て、姉の血縁者だと気づいたらしい。

 

「弟さん、ですか?」

 

「はい。姉の御友人の方、ですか?」

 

「友達ってほどじゃないんですけど、まぁ、知り合いって言うか。

高校が同じだったんで、亡くなってって聞いて、地元に住んでるんで、お宅のお父さんに電話で場所をきいて、墓に来てみたんですよ」

 

男は、どこかきまりが悪そうだった。

ぼくはピンときた。

姉は高校時代、派手にやっていた。

それこそちゃんとした恋人でなくても、体の関係だけの知り合いもいただろう。

もしかしたら、この人は、そういった知り合いなのかもしれない。

いくら地元に住んでいても、それだけで知り合いが墓参りにくるのは、少々、親切すぎる気がした。

 

「あの、ぼく、姉が夢にでてくるんですけど、ひょっとして、あなたも」

 

僕に聞かれた男は、うわっと声をあげてあとづさった。

 

「あ、あの、すいません。

俺は、お姉さんとは、高校の時だけで、その後、まったく関係なかったんですけど、亡くなってから、俺のとこに」

 

彼の怯えっぷりがあまりにオーバーだったので、ぼくは少し笑ってしまった。

 

「ぼくの、個人的な意見ですけど、姉はあっさりした人で、あっけらかんとした性格なんで、なにごとにもそうこだわらない、っていうか気分屋でした。

あなたのところにでてくるのも、そう深い意味はないと思いますよ。

ここでちゃんとお参りしていけば、大丈夫じゃないんですか」

 

「ほ、ほんとにそうかな?」

 

「そう思いますよ」

 

「俺、霊能者の先生にも、ここに墓参りするだけでいいって、言われたんだ。

死んでふらふらしてるだけだから、墓で拝んで、線香をあげてやればいいって」

 

「霊能者の先生に会いに行ったんですか?」

 

「だ、だって俺のとこは夢じゃなくて、本当に幽霊がでたんだよ」

 

男の慌てぶりは、やはり笑えたが、姉と男の間になにがあったのかは、聞かずにおいた。

姉さんは亡くなっても騒がしい人だと思った。

その後も姉はぼくの夢にでてきたので、ぼくは墓へ通った。

姉の墓であった二人めの男は、年齢は前回の男と同じくらいだが、ブランド物の高い腕時計をして、高そうなスーツを着た、まともな職業の人間には見えない、どこか変質的な感じのする、爬虫類っぽい、気持ちの悪い痩せた男だった。

男は、ぼくに気づくと、何秒も、ぼくの顔をじっと見つめていたが、なにも言わなかった。

線香の匂いと、男のコロンの香りが墓の前で混ざって、おかしな感じがした。

その一週間後に、三人めと出会った。

三人めは、ぼくと同じくらいのトシの普通のサラリーマンに見えた。

黙ってぼくに会釈し、

 

「霊能者の鈴木先生に言われてきたんです。

遺族の方ですか?」

 

「〇〇〇の弟です。

ぼくは鈴木先生を知らないんですが」

 

「TVにもでてる霊能者さんですよ。

お姉さんが、オレのところにでてくるんで、鈴木先生に相談したら、墓参りに行けって言われまして」

 

ぼくは、この彼にもくわしいことは聞かなかった。

姉さんは、ぼくに自分の恋愛や知り合いの話をする人ではなかった。

では、姉は何度もぼくの夢にでてきて、ぼくになにを伝えたいのか?

それが気になった。

3人めの後、しばらく姉の墓へ行っても誰とも会わなかった。

そして、数ヶ月がすぎて、ぼくはその日で最後にするつもりで、墓へ行った。

その日、姉の墓を訪ねてきたのは、これといった特徴のない中年の男性だった。

ぼくは、彼の姿を見た瞬間にこれが鈴木先生だと直感した。

鈴木先生は、姉の墓石を持ってきたたわしで掃除し、水を替え、榊を替えて、線香に火をつけた。

一通りお参りが終わると、彼は、ぼくに話しかけてきた。

 

「〇〇〇さんの弟さんですね。

鈴木誠です。拝み屋をしています。

たまたま僕のところに依頼人が、3人とも〇〇〇の話をしたので、これもなにかの縁だと思ってお参りにきました。

生前のお姉さんは知りませんが、僕が言えるのは、お疲れ様でした、だけですね。

亡くなればみんな仏様です。

人はみな最後は、頭をさげられ、手を合わせて拝まれる存在になります」

 

ありがとう。

耳元で姉の声が聞こえた気がした。

ぼくは、鈴木先生に会うために、姉にここに呼ばれたのだと思った。

 

「鈴木先生。ありがとうございました。

姉もこうして、みんなに頭をさげられる存在になったと思います。

お世話になりました」

 

「いいえ。僕はなにもしてないようなもんですよ。

お姉さんは、最後をご家族の誰かに見送って欲しくて、あなたが選ばれたのでしょう」

 

鈴木先生は、ぼくと、姉の墓に丁寧にお辞儀をして去っていった。

それから、ぼくの夢に姉はでてこなくなった。

 

END

☆☆☆☆☆
35話めは以上です。
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。

前にコメントでどなたかに書かれたのですが、体験談が多いせいか、この怪談は、いかにも怖い話よりも、不思議な話が多いです。

 生きている人と人のかかわりも不思議な関係が多いように、亡くなった人との関係も奇妙な不思議なものが多いのかもしれません。

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