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100-76 Dの寮

100-76 Dの寮

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京都にある有名私立大学Dに地元の幼なじみが入学した。

僕たちの地元は中部地方なので幼なじみのHDの学生寮に住むことになった。

そして大学一年の冬休み、僕は地元の友達のTと二人でHが暮らすDの学生寮へ泊まり込みで遊びに行った。

Dの学生寮は歴史のある洋館で、Hが使っていた部屋は、有名俳優のNが若い頃にいた部屋なのだそうだ。

そもそも夜、京都に着いてこの学生寮を尋ねたのだが、その時の印象からしてよくなかった。

雰囲気のあるレンガ造りの学生寮で正直、僕はなにかがでそうな気がした。

Hの部屋で僕らが買ってきた酒とつまみででささやかな宴を開いていた時に、僕はHに聞いてみた。

「ここ、オバケとかでそうだけど、大丈夫なのか?

僕の問いにHは出るよ、と即答した。

ここで心霊現象が起きるのはすでに寮生の間で常識になっていて、先輩たちが残していった体験談もたくさんあるのだそうだ。

「でも、人がすぐに死んだりするわけじゃないから大丈夫だろ」

Hは意味ありげな言い方をしたが、それ以上はくわしく教えてくれなかった。

すぐにじゃないというのは後日、災いがあるという意味だろうか?

その夜は僕とTがHの部屋に泊まり、Hは同じ寮にいる海外留学生の彼女の部屋に行くとのことで、僕らを残して部屋を出て行った。

「いいか、もしここでなにか見たり、聞いたりしても、なにも信じるな。いいな」

Hのアドバイスはまるで脅しのような感じだった。

深夜、Hの部屋で二人きりになった僕とTは夜食を買いにコンビニへ出かけた。寮から近くのコンビニだ。

真冬の京都は底冷えがした。コンビニに着いて食べ物を選んでいると、Tが気になることがあるから先に部屋へ帰ると言いだした。とにかく気になるから先に行ってる。僕が止めてもきかずにTは戻ってしまった。

仕方がないので僕は一人で夜食を買って寮へ帰った。

静かな夜で洋館の寮はひっそり静まりかえっていた。

僕はHに聞いた、よく霊が目撃されるという洋風の踊り場を通過してHの部屋へ。

疲れたのかTはすでにベットで横になっていた。

一人用のベットに男二人で寝るのもなんなので僕は一晩、イスで寝るつもりだった。

灯りを消して椅子に座ったまままぶたを閉じた。角部屋で外に面した窓もあったので部屋は真っ暗にはならなかった。

僕がうとうとしているといつの間にかTが僕の隣に来て立っていた。

「一人だと寒いから、きて、一緒にベットで寝てくれ」

一瞬、なにを言ってるんだと思ったが、たしかに室内は寒かった。

僕はベットに入り、小柄なTは僕の背中にへばりつく格好で二人並んで横になった。

「寒い。寒い。寒い」

背後でTがつぶやいている。

もともと体の強くない男なので京都の寒さがこたえているのかもしれない。

「寒い。寒い。怖い。死ぬ」

そのうちにTのつぶやきに、怖いと死ぬが混じりだした。

「おい、怖いとか死ぬってどういう意味だ」

思わず僕は聞いたが、返事はなくTはただただ怯えた様子で震えていた。

「おまえ、ひょっとしてなにか見たのか?」

Tは答えなかった。

翌朝、僕らは地元へ帰った。

帰りの電車内でTに昨夜のことを聞いてもやはりなにも教えてくれなかった。

その後、学校を卒業して僕もTも就職したが、Tは心を病んで退職、一度入院した後は、入退院を繰り返して暮らしていたが、数年前に亡くなった。

真昼の国道で母親を隣の載せて車を運転していて、突然、対向車線に突っ込んで対向車と正面衝突、母親と二人で即死だった。

「俺は生きてても死んでてもおんなじだから」

死の直前にTは僕にそう言っていた。

京都のあの夜からTはおかしくなったと僕は思う。あの夜、なにを見たのか、聞いたのか、もう誰も教えてくれないし、Tは結局、なにも言わずに死んでしまった。

 

☆☆☆☆☆

 76話めは以上です。

 前回から間があきました。

 お久しぶりです。本気で本です。

 本来なら75話の早九字の続編を書く予定だったのですが、間に実話怪談のコンテストにこちらを応募して、落選したので、ここに掲載です。
 今回は僕の学生時代の実体験です。

 実話であるのを意識しすぎておもしろみがなかったかな? と反省しています。
 怪談、また書きますね。 

 この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。

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