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100-79 忘れられない-1

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100-79 忘れられない-1

道子はずっと同じ悪夢に悩まされ続けている。

いまから30年以上前の、まだ20世紀の終わり、いわゆる世紀末だった頃の地方都市の田舎町が舞台だ。

当時と2010年代後半のいまでは、そんなに大きな違いはない気もするが、やはりいろいろ違う。

まだ小学生だった道子は、友達のゆきと夜道を歩いていた。

小、中学年が子供だけで外を歩くにはかなり遅い時間だ。

2人はなにか理由があって一緒に近所のコンビニへ向かっていた。

はじめは、車通りの多い国道の脇の歩道を並んでてくてくと歩いていたが、そのうちに道子は近道を思いついたのだ。

「ねぇ、森を抜けようよ」

森を抜ければ、普通の歩道を行くよりも、コンビニに早くつける。

森は、うっそうと木々がしげっていて街灯もないが、木々の間からすこし先の道路のあかりが見えるので、まったくの暗闇ではない。

森の奥は山までつながっていて、そちらはさすがに真っ暗だが、そこまで行かなければ危険はないように思えた。

「絶対、こっちの方が近いよ。2人で行けば、大丈夫だよ」

道子はゆきの手を掴んで、森へと歩きだした。

ゆきと道子は幼なじみで、ゆきはいつも道子に優しかった。

道子の提案した遊びにいつでも付き合ってくれたし、どんな場所へも一緒に行ってくれた。

暗い暗い森を2人は、足元に気をつけながら進んでいった。

背の高い杉の木が主体になって構成されている森の中は当然暗かったが、道子はゆきと冒険をしている気分がして、なんとなくウキウキしていた。

「クマがでたらどうする?」

そんなものはいないと知りながら、道子はゆきにたずねた。

「逃げる」

ゆきは即答する。

「トラは」

「逃げる」

「オオカミは」

「逃げる」

「じゃ、オバケは」

「逃げる」

ゆきも楽しそうに答え続けた。

と、2人がしばらく歩いた頃、ゆきが足をとめた。

「どうしたの?」

「いま、聞こえた」

「なにが?私、聞こえなかったよ」

「ほら、よく聞いて」

ゆきに言われ、道子も足をとめ、耳をすませた。

道子にもすぐに聞こえてきた。

それは足音だった。

地面に落ちた、枯葉や小枝を踏みながら、なにかがこちらへ近づいてきている。

「あっちからだ」

ゆきは、森の奥を見つめている。

道子もゆきの隣で闇に目を凝らした。

姿はまだ見えないが、音は少しずつ近づいてくる。

森の奥からこちらへなにかが近づいてきていた。

ゆきも道子もその場から動けなくなり、黙って耳をすませた。

そのうちに、森の奥から影が2人の方へ寄ってきた。

それは目の前まできてみると、中年のおじさんだった。

ゆきも道子も知らない人だ。

小太りで、ジャージを着て、スニーカーを履いていた。

おじさんは、2人を睨むように眺めると、急にゆきの手首を掴んだ。

「家族が待ってるから、おじさんとこっちへくるんだ」

体の大きさが二回り以上も大きな大人の男の力で、ゆきはおじさんの側に引き寄せられてしまった。

「おじさんは誰ですか?」

「きみの家族の知り合いだ。家族の人に頼まれてきみを迎えにきたんだ。

ここは私有地だから、勝手に入っちゃいない場所なんだ。

勝手に入ると法律で罰せられるぞ。

もう安心しなさい。おじさんが家族のところへ連れて行ってあげるから。

きみも一緒に行くかい?」

道子もそう聞かれたが、道子は返事も動くこともできなかった。

ただ、怖かった。

このおじさんが言ってるのはウソだ。

なぜかそう思った。

でも、言い返せなかった。

急に訪れた、このわけのわからない状況に叫びだしそうだった。

と、

「道子ちゃん。

私、平気だから、道子ちゃんは帰っていいよ。

私、おじさんと行くから」

ゆきが言ってくれた。

道子はその言葉が合図であったように、ゆきとおじさんに背を向けて、いまきた道を全力で走りだした。

とにかく、ここからいなくなりたかった。

ゆきも、おじさんも道子を追いかけてこなかった。

道子は森を抜け、国道のところまで戻って、泣きながら、家まで走っていった。

携帯もネットもまだない時代だ。

親にこの状況を知らせるには、走るぐらいしか思いつかなかった。

10分後、道子の話を聞いた母親が警察とゆきの家に連絡した。

すぐに警察により捜索が行われたが、ゆきもそのおじさんも見つからなかった。

2人は、あの日のあの場所以降、消えてしまったのだ。

おじさんは、やはりゆきの家族知り合いではなかった。

道子はあの日以来、心身の調子を崩し、登校拒否になり、精神科や神経科にも通った。

結局、ゆきは行方不明扱いとなり、それから30年が過ぎた。

道子はいまでもあの日のゆきの夢をみる。

内容は、あの晩の森でのできごとの繰り返しだ。

1人で家まで戻って泣きじゃくるところで夢は終わる。

 

いま地元の小学生の間で噂になってるらしい・・・。

道子がSNSでその噂を知ったのは、たまたまだった。

ゆきの件について情報を求めて、ネットを徘徊するのは、もはや道子の日常的習慣になっていたが、都市伝説までは普段は気にしていなかった。

だが、地元の刑事事件などを調べているうちに、最近、この地方では、深夜、小学生ぐらいの少女と中年のおじさんの2人連れの幽霊が多く目撃さており、それが小学生たちにはまるで事実のように広まっていると知った。

ムラサキのジャージのおじさんと、ピンクのパーカーの女の子。

2人は深夜に国道脇の道を歩いていて、そのうちに森の中に消えてゆくという。

おじさんは、少女をゆきちゃん、と呼ぶらしい。

道子はこの話を知り、これは、ゆきとあのおじさんなんだと直感した。

幽霊でもなんでもいい。

私はあの2人に会わなくてはならない。

道子は、2人に会うために地元へむかった。

 

END

 

☆☆☆☆☆
 
79話めは以上です。
 
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。

これはとある有名な迷宮入りした実在の怪事件がベースになっています。

その事件に、自分がかかわったらどうするかを後編では鈴木誠ががやってくれるはずです。 

迷宮入りしてしまったような事件は、いつしか都市伝説になりますよね。

わけがわからないから忘れられないのでしょうか?

もし魅力の根源がそこになるのなら、解けないから人気のあるクイズなんてもつくれるかもしれません。

ゲームや数学の問題、小説、映画では難かいだからこそ愛されている名作ってありますよね。 

 

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