脳出血した中高年のための怪談100物語 → 鈴木誠の怪談100物語の タイトルで小説投稿サイト、アルファポリスと同時更新中です。 サイドバーに「アルファポリスリンク」へのリンクがあります。 広告

100-80 忘れられない-2

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100-80 忘れられない-2

「霊視 お祓い 霊との交流etc」

と、いかがわしいとしか言いようのない業務内容が記された案内が、霊能者、鈴木誠事務所のHPには提示されている。

当然ながら、ここを訪れる客はこのHPを見てからくる者が多い。

道子もまたその1人だった。

「こんにちは。さきほど、お電話したものですが、鈴木さんはこちらですよね?」

おっかなびっくりといった感じで事務所にきた道子に、誠は椅子をすすめ、テーブルにコーヒーカップを置いた。

「どうぞ。

僕が鈴木誠です。

それで、この市で噂になっている霊現象に興味があられるとか」

誠はこのスーツ姿の地味めな服装、化粧の女性に好感を持った。

異性としてではなく、まともな話ができそうだ、という意味である。

霊能者の事務所に来る客は、なかなかどうしても普通でない者も少なくない。

霊のせいでそうなっている者も中にはいるが、ここよりも精神科の医師のところへ行った方がいいのでは? と誠が思うような客もよくくる。

誠としては、自分はまじめに霊能力を世のため人のために活かしたくてこの稼業をしているのであって、それは別にオカルト好きの精神的に問題のある人を募集しているのとイコールではないのだ。

道子は電話でも、こうして実際に対面しても、普通に話のできそうな女性だった。

しかし、

「お客さん。

ご気分はいかがですか?」

誠はそう聞き、道子の返事を待たずに部屋に置いたソファーベットを道子に勧めた。

「めまいがしたり、吐き気がしたりしませんか?

どうぞ、横になって楽な姿勢になってください」

「は、はい」

実際、気分が悪かったらしく、道子は誠の申し出を断らず、パンプスと上着を脱いで、ソファーベットに横になった。

「さっきまでは平気だったんですけど、ここにくるうちにだんだん気分が悪くなってきたんです。

先生、これは霊のせいなんでしょうか?」

「あの、僕のことは基本的には鈴木で結構です。

鈴木さんでお願いします。」

実は道子さんがここに入られてきてすぐに、後を追うように来てるんですよ」

「来てるって、なにが・・・?」

「見えてないんですよね」

「はい。

見えません。なにが来てるんです?」

「まるであなたの付き人のように、小学生くらいの女の子が、いま、この部屋にきてます。

脅かすつもりはありませんが、その子はあなたの横に立って、心配げにベットのあなたを見つめてますよ」

「えっ、本当ですか??私にはまるで見えません。

鈴木さんには、本当に見えるんですか?」

「今回の子はよく見えています。

この子はあなたへの悪意はないようですが、しかし、多くの人は霊的なものに側にこられるだけで、体調に変調をきたしたりします。

いまのあなたの状態は、いわゆる憑かれているというものですよ。

たしか、ご依頼は、この霊をあなたから離すことではないですよね?」

「鈴木さん。その女の子はどんな感じですか?教えてください」

「そうですね。

あくまで僕にみえる範囲のものをお伝えすると、7、8歳くらいで髪はおかっぱ、目は切れ長で整った顔をしている。着ている服はピンクのパーカーと黒いジーンズ」

「ゆき」

道子はそうつぶやくと、涙を流しはじめた。

上体を起こし両手をのばして側にいる少女の霊に触れようとする。

「ゆきちゃん・・・?ここにいるの? ねぇ、ゆきちゃん!!」

号泣している道子の様子に誠はあ然としていたが、泣きわめきながら、道子の体がガタガタと小刻みに震えはじめたのに気づき、道子の横で彼女を抱えるようにし、

「生きていない者にあまりに心を奪われすぎると、連れていかれてしまいますよ。

あなたの身が危ない。

いまは一時、ゆきちゃんには帰ってもらいましょう」

懐からだした数珠を道子の首に巻かせ、室内の棚から守護の護符が縫いこまれた布を持ってくると、道子の全身を包むようにそれをかけた。

「パワーストーンの数珠と、霊力の高いお坊さんが作った護符を中に縫い込んだブランケットです。

なんなら、このまま眠られてもかまわないので、少し休んで、その後、お話をうかがいましょう」

誠が言い終わらないうちに、よほど消耗したのか、道子は眠りに落ちていた。

 

小一時間ほど眠って、目をさました道子は、幼い頃のゆきとの出来事を誠に語った。

「ネットで最近、噂になってるって知って、見にきたんです。

それで、自分で現場へ行くつもりだったんですけど、私は、その、霊能力とかないし、不安だったんで、ちょうどこの地区にテレビとかにもでたことのある鈴木さんがいらしたので、もしできたら、一緒に現場に行ってもらおうと思って」

「わかりました。

それはかまいませんが、会ってどうするつもりなんですか?

さっき実際に体験されたように、あなたもあちら側に連れて行かれてしましますよ。

それでいいのですか?」

「それは・・・」

道子は言いどよみ、お腹を守るように両手で抱えた。

「そこには、赤ちゃんがおられるのですね」

誠は、まだふくらみの目立たない道子の腹部に、新しい生命を感じた。

「結婚も妊娠も、ずっと、相手がいなかったわけじゃないけど、ゆきちゃんとあんなこあとがあった私が普通の人生を歩んじゃいけないって思って、ずっと・・・。

それでも、こんな私とでもずっと生きていきたいっていってくれる人と出会えて、それで、式はしていないけれど子供できて、だからよけいにゆきちゃんのことをはっきりさせておきたくて」

「なるほど。

正直、でしたらもうあなたはゆきちゃんに会わない方がいいように思います。

ゆきちゃんは、なにがったのかはわかりませんが、いまはすでに生きている人間ではありません。

あなたとはもう住む世界が違う存在なのです。

あなたはあなたでこちらの世界で幸せに暮らしていかれればいいと思います」

「でも、私はゆきちゃんのことが忘れられないんです。

あの時、私があの子と一緒に逃げていればよかったのに。

私は自分だけ逃げて生き残って・・・」

話しながら道子はまた泣きそうになった。

誠にしても、道子の気持ちもわからないでもなかった。

幸い、いまはまだ昼間だ。

国道沿いの歩道にゆきちゃんと男の幽霊がでる夜中まではまだ時間がある。

さっきあった感じだと、強力な怨念のある悪霊と言った感じではなかった。

きっと、遺体も供養されないまま、行き場所が見つからず、さまよっているのだろう。

準備をしていけばなんとかなる気がする。

「じゃ、今夜、僕も一緒に行きますよ。

いいですか、今夜、ゆきちゃんとお別れです。

あなたはこちらで、生きてください。

お腹の子と一緒に。

いいですね?」

言い聞かせるように誠は言うと、深夜の再会を約束して、道子を宿泊しているホテルまで送って行った。

 

END

 

☆☆☆☆☆
 
80話めは以上です。
 
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。

前後編のするつもちでしたが、今回は終わりまで書ききれず、本エピソードは3部構成にさせていただきます。

基本、1話2000字をだいだいの目安にしているのでうが、今回のように物語(?)自体がボリュームを求めてくるとこちらの計算通りにはいかなかったりします。

本エピソードの完結を期待して読まれた方すみません。

次回、100-81 忘れられない-3 で鈴木誠がきっちりしめてくれるのではないでしょうか?

 

 

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