100-50 寺院死
「これは私が海外へ旅行した時の話です。
旅行会社のツアー旅行で、オプションで現地での寺院めぐりがあったので、私はそれにも参加することにしたんです。
歴史のある有名なお寺で、建物自体にも文化的な価値がある場所でした。
私は彼と一緒に、そのツアーへ行ったんです。
寺院めぐりもすごく楽しみにしてました。
ただ、気になることがありました。
現地に着く前にネットでみていた情報なのですが、そのお寺は、戒律にとても厳しくて、生理中の女の人などは、絶対に敷地内に入ってはいけないのだそうです。
入ると、わざわいが訪れるとか。
私は、現地で体調が悪くて、そろそろアレがきそうな感じがしていたので、当日、主人に話して、寺院めぐりのツアーをキャンセルしたんです。
主人一人に行ってもらって、一人でホテルでゴロゴロしてました。
実際、翌日、アレになったので、まぁ、行かなくてよかったかな、って」
彼女はここまで話すと、誠ににっこりと微笑みかけた。
「お寺が見られなくて、残念ではないですか?」
「それはそうですけど、私がキャンセルしたツアーに参加した女性の方たちがいて、彼女たちが女同士、3人できてたそうなんです。
それで、その中に生理中の子がいて。
ね、鈴木先生、その子たち、どうなったと思いますか?」
「そういう状態でお寺へ行ったので、バチがあたたったんですか」
「はい。
死んじゃったんです」
「本当ですか」
神様のバチにしても厳しすぎる気がした。
しかし、彼女はおおまじめに話した。
「お寺から市内に戻って、タクシーで市内観光へ行ったそうなんですけど、そのタクシーごと、海に落ちて、3人とも死んじゃったんです」
「あなたは、どうしてそれを」
「ツアーのガイドさんが、寺院をでた後に彼女たちから、今日、実は生理だったけど、なんともなかった、と聞いていたんです。
ガイドさんは、これは危ないから、気をつけなさい、と注意したそうなんですが、もう手遅れだった、と。
私も、行っていたら、死んでたかも。
あのお寺、そういう面で厳しいってネットでも有名なんですけど、まさか、自分のすぐ近くで、そんなことが起こるなんて。
鈴木先生。ああいうことって、本当にあるんですね」
「あなたが無事でよかったです」
誠は彼女の話を聞き、以前、聞いた、別の話を思い出していた。
それは日本の中部地方の有名な神社にまつわる話だ。
長く日本をおさめた将軍様が創建したその神社へ、あるカップルがでかけた。
男性の方は歴史にくわしく、その神社で神と祀られている将軍様に、個人的に意見があり、彼としては、将軍様は、いろいろ問題のある人物らしかった。
彼は、彼女と神社をまめぐる間、ずっと、将軍様の批判をし続けた。
なにも知らない彼女に、将軍様がいかに卑劣な男なのか、説き続けた。
そして、神社から帰った翌日、彼の眼球に異変が襲った。
数万人に1人という奇病で眼球が腫れ上がり、ゼリー質になってしまい、あと少し対処が遅ければ、眼球が解け落ちるところだったのだそうだ。
彼は、この奇病の原因は、ゆかりの神社で、将軍様の批判をし続けたからだと思っている。
やはり、天下人で神までなった人なのだから、おそれ敬わなければならないと、彼は反省した。
「神社仏閣は、現実の社会とはまた違うルールの上に成立している場所だから、そこへ行く時には、それを念頭にいれておかないといけませんね」
話の結びに、誠がそうまとめると、彼女はもっともらしく頷いた。
END
☆☆☆☆☆
50話めは以上です3。
この100物語は、私が聞いたり、体験してきた怪談と創作のミックスみたいな感じです。
今回はどちらも知り合いから聞いた話がベースです。
僕も神社仏界は聖域だと思います。
さて、この100物語も50話まできました。
とりあえず、あと半分ですね。
頑張りますので、よろしくお願いします。
みなさんのご意見、ご感想、お待ちしてます。