ダニーボイル監督の「T2 トレインスポッティング」は、1996に公開された同監督の「トレインスポッティング」の続編です。
前作の登場人物たちの20年後を同じキャストが演じていて、イギリスでは大ヒットした前作に負けないくらい、ヒットしました。
前作の公開時、「パルプ・フィクション」(1994)等で世界の映画界をせっけんしていたクエンティン・タランティーノ監督に対して、イギリスの映画ファンたちは、「トレインスポッティング」があればタランティーノはいらない!! と言っていたそうです。
なんか、そうした言葉自体が非常にイギリス的というか、イギリスの人ってそうだよね、と僕は思いますね。
僕個人は、このドラックジャンキーたちのどうしようもない青春映画(1作目)が好きで、公開当時から何度も観てきたので、この続編にもすぐに飛びつきましたよ。
1作目は日本でもけっこう話題になっていたのですが、20年後を描いた2作目は、日本では興行的にはうまくいかなかったようで(興収1.8億円)、なんかぱっとしなかったですね。イギリスでは1作目を超える興収だったのに。
しかししかし、親しい人からエセイギリス人と呼ばれる僕としては、2作目も当然、ドストライクで超イギリスしているクソ映画(褒め言葉)でした。←エセイギリス人と言っているお方はあのお方、長女様です。
一作目を観た人はみなさん、御存じのように、「トレインスポッティング」と言えば、
ドラック、不良、暴力、犯罪、SEX
です。
本作でもその要素は健在で、登場人物たちのクソ野郎っぷりも相変わらずですよ。
不良少年たちがでてくるリアル志向の青春映画は、どこの国の作品でもテイストが似ている。
ですよね。
まず、1作目の「トレインスポッティング」は、スコットランドの首都エディンバラで定職にも就かず、気ままな日々を過ごしているジャンキー(ヘロイン中毒者)のレントン、ジャンキーでスケこましサイモン、アル中で暴行癖のあるバグビー、お人好しのジャンキーのスパッドの4人が犯罪したり、ナンパしたり、暴れたりしながら、物語のラストで悪さで大金を手に入れたレントンが1人でそれを奪って街(エディンバラ)から逃走、というところで映画は終わっていました。
いきなりですが、
男子なら誰でもわるさをしていた過去(若い頃)はありますよね。
逮捕されるほどのことではないけれど、まじめな会社員(公務員)でも過去にちょっとしたごまかしや不正はしているのではないですか?
で、そのわるさの度合いはひどすぎて、殴った相手を殺してしまうとか、巨額の金を不正に手に入れてしまうとか、までいってしまうと普通の生活に戻れなくなって、やがては刑務所へ行くハメになるのですが、そこまでは行かなかったけど、自分もけっこうヤバいことしてたよな、ヤバい仲間がいたよね、という人は多いと思います。
「トレインスポッティング」は20代中半の青年のそうしたお話で、「T2 トレインスポッティング」は20年後の40代中半になった彼らのちょっと(かなり?)ヤバい話ですね。
この先、「T2 トレインスポッティング」のネタバレします。
ここまで、読んでうわっ、オレ(もしくは私)そういう連中は苦手だわ。と、思う方は今日はここで終了ということで、残念ながら、今回はこの後、えんえんと不良映画の話です。ちなみに僕はこの映画は好きですし、不良映画を観るのも別に苦痛ではありません。(あまりに安っぽいやつ、ヘタな演出過剰なやつは除く)
本作の各要素がそれぞれどんな感じで描かれているのか書きます。
ドラック:T2のレントンはすでにクスリをやめてますが、サイモンは常習しているようですし、スパッドは幻覚に襲われ続け、クスリをやめられない自分と縁を切るために自殺しようとします。
日本もそうなのかもしれませんが、イギリスのちょっとイっている不良は、やはりずっとクスリと縁が切れないみたいですね。
前作では、ラリったレントンが便所の便器の中へダイブしてました。今作は、自殺しようとしたスパッドが自分のゲロまみれになります。
ジャンキーがクソまみれやゲロまみれになるのは、一般的なイメージなのかもしれません。
不良:前作でもそうだったように、40中半をすぎたいまも4人はちゃんとした職に就いておらず、日々をだらだらとすごしています。
彼らに転がってくるウマイ話は、やはり犯罪だったりして、彼らは以前と変わらず倫理観なくそうした話に飛びつきます。
暴力:前作の最後でも暴れて逮捕されていたバグビーは、今作は刑務所からスタートで、接見にきた弁護士に暴行を振るい、入院、脱走、街(エディンバラ)へ戻って、また悪さをし、あげけ、かっての仲間のレントンを殺そうとします。
しかしまぁ、救いとしては、今作では最後まで4人の誰も死にません。(前作では友達が死んでた)
バグビーはまた刑務所へ戻ることになりますが、それは当然ですね。
犯罪:ドラックは当たり前として他にも強盗、詐欺、殺人未遂など、今作もいろいろあります。自分のような平和な日本のパンピーとしては、やはり、まともに働かないでいると、こうして手軽な? 犯罪へと人は流れていってしまうのかな? と思います。
街でくすぶっている、更生する気ゼロのジャンキーをそのまま描くのが、「トレインスポッティング」シリーズのようなので、彼らの生き様には反面教師的なものを感じるのも、あながち間違った見方ではないですよね。
SEX:前作では4人の友達がエイズに感染して悲惨な感じで亡くなっていました。また、レントンが若い女の子をひっかけたつもりが、実は彼女がまだ女子中学生であり、ようするにレントンはマセたお子様に、ベットで支配権を取られ、騎乗位でまたがられたり、いいように性のオモチャにされていたというエピソードがありました。
今回も、レントンとサイモンは同じ女性と関係を持つのですが、結局、市をダマして手に入れた金を全額、彼女に奪われ、逃げられるというオチがつきます。
まとめとして、この映画は、邦画だと北野武監督の「キッズ・リターン」(1996)や島田紳助監督の「風、スローダウン」(1991)のような青春不良映画、青春挫折映画と同じテイストの作品だと思います。
「まともにやってもうまくいかないやつが、ワルさをしてもうまくいかないんだよ」
というお話ですね。
でも、人気がある理由は、サントラや映画のルックがどこかオシャレだからではないでしょうか?
「トレインスポッティング」は、一時(1990年代中頃)イギリスで流行した「ブラー」や「オアシス」などのバンドの音楽を中心としたブリットポップと呼ばれる文化の一つだとも言われています。
オレ、クズでどうしようもないけど、明るく生きてもいいだろ?
みたいな問いかけに、あいまいながらも頷けるあなたへ117分の遅れてきたブリットポップ、オススメします。
5点満点中3点(映画自体は悪くないのですが、僕自身がトシをとったせいか、人や社会に迷惑かけても、自分だけが明るく生きる人間を素直に応援できないので、マイナス1)